オールユアーズのスイッチスタンダード2022年版

オールユアーズのスイッチスタンダード2022年版

「あたりまえをあたりまえにしない」という価値観のもと、これまで幾多もの「あたりまえ」を更新すべく活動してきました。
https://note.com/allyours/n/n022707e1004a

このnoteは2020年3月17日に公開したものです。コロナウイルスという脅威が突如出現し、わたしたちのあたりまえをアップデートせざるを得なくなったタイミングです。

スイッチスタンダードプロジェクトを掲げた2020年から2年が経過し、マスクを付けたり、リモートワークがあたりまえになりましたが、わたしたちオールユアーズもアパレル業界のあたりまえをアップデートするため、地道に活動を続けており、やっと形になってきました。

今回はオールユアーズのスイッチスタンダードの現在地をお伝えします。常日頃から代表の原は「アパレル業界は無責任に服を作っている」と言います。”その言葉の意味と、わたしたちの活動”はどのように繋がっているのでしょうか。

オールユアーズのスイッチスタンダードとは

ーなにかをスイッチすること、切り替えるには「あたりまえ」が存在すると思います。まずは原さんが思う、アパレル業界のあたりまえを教えてください。

基本的にはどのアパレル企業も”シーズン”という考え方を基本として服を作っています。これが一つのあたりまえです。

前提として、アパレル業界には色々なプレイヤーがいるので、すべての人が何か一つの共通のルールに則っているわけではないのですが、服を作って売るという観点では業界のあたりまえになっています。

コレクションという言葉を聞いたことがある方は多いのではないでしょうか?パリコレクションや東京コレクションといったコレクションは有名ですよね。

このコレクションでは、世界規模の大きなブランドが「次のシーズンに私たちはこの服を売ります」と発表をするんです。いわゆる”トレンド”はこのコレクションで発表された服を元に形成されていきます。

服を作ることに話を戻しますね。アパレル業界はコレクションで発表された服の傾向に合わせて、服を作っています。コレクションに出るブランドがピラミッドの最上位でトレンドを作り、ピラミッドの真ん中から下に位置するブランドや百貨店はトレンド通りに最上位ブランドよりも安く服を作る。アパレル業界は今も昔もこの流れで服を作っています。そして僕はこのピラミッドの真ん中より下に属している会社たちが、ある意味「無責任」に服を作っているという印象を持っています。

服ではなく、流行りが価値に。

世の中に流通している服の多くは、”流行ったものを安く作る”という考え方で作られたものです。なぜそのデザインで、なぜその生地で、なぜその繊維を採用したのかを考えていない。ということはつまり、買う人のことを考えていないんですよ。服自体に価値はなくて、「みんなが着ている」という「流行」が服の価値にすり替わってしまう。流行が価値の服は、流行が終われば着られなくなり、いずれ捨てられてしまいます。

そして残念なことに「流行り物をとにかく安く作ろう」という考え方の会社が、アパレル業界の多くを占めていると感じています。だからわたしたちオールユアーズがやっていることは「無責任に服を作って、安く売る」会社に対するカウンターなんです。僕はお客様に、服自体の価値を感じて買っていただきたいですし、買っていただいた後も、その服に責任を持ちたいなと思ったんです。

10年後も流通する「わたしたちの服」

「シーズン毎に新作を発表する」ことを追求するのではなく、今も10年後も同じ製品を流通させたいです。2022年に売っているものは、2032年にも売っていたい。世の中の定番商品になるものを作りたいと思っているんです。

ーなるほど。オールユアーズの製品においては、何が定番商品にあたると思いますか?

今はまだ、オールユアーズに定番商品は無いと思っています。オールユアーズを創業したときに「10年間売れ続ける定番商品を作ろう」と決めて、今年が創業7年目になります。その中で7年間売れ続けている商品は「ハイキックジーンズ」のみ。だから「ハイキックジーンズ」が10周年を迎えたときに初めて「定番商品ができました!」と言いたいですね。

とにかく既存のルール、既存のヒエラルキー構造には乗らないという意識でやっています。10年売れ続ける定番商品を作るためにはトライ&エラーを含めて様々なパターンの洋服を作らないといけないとは思いますし、必要だと思うものがあればリリースをします。しかし、トレンドに合わせて自社製品を毎シーズン更新することはしません。価値のある服を長く販売している、長く求められる状態を目指します。愛用品って長く使いたいし、壊れたり、使えなくなったりしたら、直したり、買い直したりしますよね?

シーズンやトレンドという考え方を基軸にせず、服に価値を持たせる。それが、僕たちオールユアーズがアパレル業界に対してやっていきたい「スイッチスタンダード」ですね。

売った後にも「責任」を持つこと

“もの”を買った後、その”もの”はどうなると思いますか?消費者目線での流れを改めて書き出すと、買う→使う→捨てるor売るというフローになります。オールユアーズはこのフローで発生する全ての事象に責任を持ちたいと考え、サービスを拡充してきました。このタイミングでやっと全てのサービスを作ることができたんです。

先ほどお話した無責任に作られた服は、販売してお金に変わればそれでおしまいです。トレンドという一過性のものなので、耐久度も低いですし、長く着ることや大切に着ることは想定されていません。しかし、オールユアーズの製品は、お客様に長時間、そして長期間着用していただくことを前提として作っています。

身の回りで「長時間、長期間」使用しているもので浮かび上がるものってありますか?例えば、冷蔵庫が挙げられると思います。冷蔵庫の使用頻度はとても高いです。1年中、24時間稼働しています。冷蔵庫が壊れたら、買った電器屋やメーカーに電話したり、もしくは型番を控えてGoogleで検索を行えば、何かしらのサポートを得ることができます。

しかし、服の場合はサポートが全く無いと思ったんです。長時間、長期間利用してもらう製品を提供するのであれば、サポートは必須だと思います。だから “リペア”という服を修理できるサービスを始めました。例えば、服が破れてしまった時にはどうしますか?大切にしている服や、愛用品と言えるまで自分の日常に定着した服は直したいですよね?このサービスでは、お直しのプロが服を元の状態に近い形に直してくれます。

さらに服は家電と違って、着る人の体型によって、快適さや好みの着心地に差があります。わたしたちは13サイズ展開と広いサイズレンジで製品の販売を行っていますが、サイズをたくさん用意したからといって、購入するお客さん全てが好みのサイズ感で着られるわけではありません。腕の長さや体の厚みなど人間の体は千差万別で、全く同じ体型の人間はいません。

だから服のサイズを変えられるサービス “カスタム”も始めました。

捨てる服にも責任を持つ

服を作る側の責任として、作ったものには最後まで責任を持ちたいと思っていました。

どんなに耐久性の高い良い服であっても、長時間、長期間使用しているとボロボロになっていきます。大切に着ていただいて、修理を重ねたとしても製品は必ず寿命を迎えます。また人間の体型や好みは変化するので、まだ着ることができるけど必要なくなることもあります。

所有者の中で、製品が寿命を全うしたときに、オールユアーズができる責任の取り方はないだろうか、と考えました。そのときに「回収」という手段を思いつきました。ベータ版として回収を始めたら、もう着られないものと、まだ着られるものが集まりました。

まずはまだ着られるものについてお話します。製品を作ったブランドの責任として「次の利用者へ渡す」ことが適切かなと思ったんです。また「元々は20,000円だから買えなかった、買わなかったけれど、中古品として12,000円で売っているんだったら買ってもいいか」という人も出てくるかもしれません。なので、”サルベージ品”として再販することにしました。1人の人が使い終わっても、次の人が使えるような仕組みができました。使い手を一人に限定せずとも、ひとつの製品を長く使ってもらえるということは作り手として嬉しいことです。この仕組みを「環す」と名付けています。「環す」では着なくなった他社製品の回収も行っています。

※環すとは
衣服を循環させる仕組みです。
着られなくなった製品を回収し、メンテナンスや修理を施し、再販売を行うことで、次の使い手にお渡しします。再販売できない状態のものは、環境負荷の低い磁気熱分解装置で、再資源化を行います。

人口が増えているから服が作れなくなる

ーもう着られないと判断した服はどうしているのでしょうか?

捨てることは、責任を放棄しているような気がしたんです。そこで現在取り組んでいる、そして、今後拡張させていく「資源に還す」というプロジェクトにつながります。先に結論を話しておきますが、今回収している古着が5年後などの近い未来に、自分たちの服の原材料になって返ってくるから回収を行っています。

ハイキックジーンズの生産をお願いしている、海外の会社の代表と話をする機会がありました。その会社は原料から生地を作るところから、服を作るまでを一貫して行っている会社です。

服づくりを取り巻く環境まで話が発展するのですが「服の原材料である綿花は近い将来収穫できなくなるから、悠長に服を作っていてはいけない。原材料をどうするかという観点からゲームチェンジしなければいけない」と言っていたんです。

ーなぜ服の原料である綿花が減っているのですか?

世界の”人口”増加が関係あるようです。人口現象が止まらない日本にいると実感はありませんが、世界の人口は爆発的に増え続け、現在は約79億程度とのことです。1990年は約52億人程度でしたので、だいぶ増えましたね。

もう一つのキーワードは”畑”です。あまり馴染みはないと思いますが、服の原料である綿花は畑で作られています。人間が生きることに必要な作物も畑からできています。人口増加に伴い、作物が足りなくなり、価値が上がった結果、世界の綿花畑は作物を作る畑にシフトしています。また石油や天然ガスに変わる化石エネルギーの代替品として、とうもろこしやサトウキビを原料としたバイオ燃料をつくる動きも加速しています。高く売れる物を作るというのは当たり前なので、この流れが止まることはないでしょうね。近い将来、綿花不足になることは確実なんです。実際、今年の綿花の値段は去年の1.5倍で、年々高騰しています。ちなみに綿以外の服の原料である、ポリエステルやポリウレタンの原料も石油なので、もちろん確保が難しくなっていきます。

ちなみに日本では一般家庭から1年間でどのくらいの量の洋服が捨てられていると思いますか?とある調査によると約50万トン(Tシャツ換算で約20億枚分)も捨てられているそうです。このTシャツ20億枚分の「原材料」を回収して資源化するというアクションをしなければいけないと思います。日本の捨てられる服を全て集めることが理想です。

僕たちの世代はまだしも、次の世代の人たちが困らないようなものづくりの体制を整えないといけません。

アパレル業界の未来を見据えたプロジェクト「環す」

先ほどもお話しましたが、僕たちオールユアーズでは「還す」というプロジェクトで、古着の回収を行っています。アパレル業界の未来を見据えたアクションです。自分たちが製品を作り続けるためには、自分たちで原材料を確保しなければいけない。ちなみにオールユアーズに古着を送ると、回収点数に応じて、オンラインストアで使用できるギフトカードをお渡ししています。

このプロジェクトには海外の大手企業も賛同してくれていて、共同で事業化するべく提案し始めています。また、ファスナーやボタンなどの金属パーツが取り付けてあるなど、仕分けが難しいものに関しては磁気熱分解装置という環境に低負荷の装置を使用して行います。磁気熱分解から生まれるセラミック灰からはさまざまなものが作れるので、こちらも原料として価値の高いものです。

あたりまえを更新し続ける

「今あるあたりまえを変える」、「スイッチスタンダードしていく」という思いは変わらずに持っていたいです。気をつけたいのは、スイッチスタンダードを掲げているからといって何もかもを無理矢理変えようとはしないこと。変えないほうがいいものは変えずに続けていきたいです。変えないといけないもの、変わったほうがいいよなというものに関しては積極的に変えていく。オールユアーズの製品が快適であることは、お客様にとってもうあたりまえになっていると思います。そのあたりまえをどうスイッチしていくかをずっと模索しています。ずっとぐるぐる巡って、動き続けている感じですね。

ーーー最後に、今後について教えてください。

「愛用服メーカー」になります。「愛用服」とは、気に入って安心して長い間着ることができる洋服であると定義しています。 お客様が安心して付き合えるブランドに、安心して買える商品がある店になりたいなと思っています。質の良い商品を長い期間販売しているということは、そうなるための必要条件だと思います。飲食店に行って、この店おいしいなあと思ったら何回も行くじゃないですか。そしてその店に行くと、いつも食べるメニューばかりをついつい注文してしまう、でも美味しいからまた行く、みたいな。そういうブランドになりたいです。僕たちはあたりまえへの変化を求めて生まれたブランドですが、お客様には「定番」として親しんでもらえたらいいなと思っています。お客様にとっての愛用服を、これからも作っていきたいです。

編集:清野修平
執筆:オールユアーズ愛用者Aさん