洋服は「かっこいい」だけでは足りない。

洋服は「かっこいい」だけでは足りない。

あなたの着ている服、どんな動機で選んでいますか?

現代社会で生活するために、私たちは洋服と密接な関係性にあります。
“社会的な動物”である人間が、社会に参加することの象徴物として。また寒暖の差や障害物から肌や体を保護するため。時には社会的なステータス性を示すために…

それを意識していても意識していなくても、“服を着る”ということは機能的な側面だけでなく、その服を何らかの動機で“選択”したという“意味”さえも身につけることになります。

そこには答えはありません。一人一人が自身の持つアングルで選択し、様々な動機や考え方を持って、服だけでなく様々なモノに触れて欲しい。複雑に絡み合った世界で自分のフィーリングに合う選択ができる選択肢の一つを提示したい。オールユアーズはそう考えています。

そんな中で、“オールユアーズの服”を選択してくれた方々に向けて、製品を生み出している開発者である原康人にどんな考え方でプロダクトを開発しているか?を聞いていきます。

90年代に10代を過ごした原のファッションの原体験の一つは“ヴィンテージウェア”でした。
(この記事では1940年代~1970年代くらいまでにアメリカで作られた服のことを指します)
一時期落ち着いたかに見えたヴィンテージウェアの世界も、昨今新しい世代に再評価され、価値が高騰しているといいます。オールユアーズの製品は、そんな原の原体験からヴィンテージウェアに多大な影響を受けて生まれています。

今回はその中でも“アメリカンヴィンテージ”の象徴でもある“ジーンズ”の話を引き合いに出しながらオールユアーズの初期のアイテムの一つ“ハイキックジーンズ”について現在インターンで所属している、ナカムラリクが質問していきました。

シンドイ服とシンドくない服どちらがいいですか?

好きになる理由はたくさんあり、「なぜそれを好きになったのか?」という問いに対する答えは100人いたら100通りの答えが返ってきます。
原の場合は好きになったものは“服”であり、その中でも“ヴィンテージウェア”でした。それが今の原が生み出すアイディアの大元になっているのです。

「古いものやその歴史的背景が魅力的で、33歳くらいまで古着しか着ていませんでした。
まだ製造技術が発展していない環境の中で、その時代の人が試行錯誤し工夫して作られていた生地やプロダクトの仕様が垣間見えるヴィンテージウェアに魅力を感じて着ていました」と原はいいます。

「古着が好きになっていった当時、周りの仲間はみんな501を履いていたから、人とかぶりにくい505を好んで選んでいました
特に古着のデニムが好きで、その時に選んでいたジーンズも「誰の真似もしたくない」という原らしい個性を感じる答えが返ってきました。

その当時はLEVI’Sのヴィンテージジーンズが最高だと思っていました。ヴィンテージの世界は、当然ですが新しく生産されるものが無く、世界に今存在する分しか在庫はありません。
しかも服は着ていればどうしてもダメになっていく。だから505Eだけを狙って『一生着られる分』の量を手元に置いておこうと思って買い漁っていましたね

そんな原に転機が訪れたのは30代前半の時でした。
歳を取り、体型も若い頃から段々と変わっていくにつれて、古着を着ていてシンドイと感じるようになったそうです。

「年齢を重ねていくと、体力もなくなっていくし、集中力も衰えていきます。そんなある時、無意識のうちに自分が無理をして服を着ていることに気づきました。
硬くて重たい生地を使っているヴィンテージを好んで着ていたからこそ、体のどんな部分にストレスが生まれ、着ていて『しんどい』のか?ということを直感的にわかるようになっていました。
その瞬間に自分の今後やるべきことが見えたんです」

毎日服を着る時間の中で“ストレス”を感じたことは誰でも経験があると思います。
その“ストレス”の原因は何かを考え、“ストレス”を感じない洋服作りをしているのがオールユアーズ

このインスピレーションがオールユアーズのプロダクトの原点だったのです。

「それでもヴィンテージジーンズのフィーリングは好きでした。だからその見た目のままなんだけど、ストレスがないものが欲しいと思いました。その思いで作ったものがハイキックジーンズです」

生活におけるストレスを解消していくことを目的としてオールユアーズの製品は作られていますが、それはマーケット調査から始まる製品開発ではなく、こんな風にあくまでも「自分たちが必要とし、欲しいと思える」ものから始まります。

なぜジーンズを作りたかったのか?

創業時から販売しているハイキックジーンズですが、ジーンズに着目して最初の開発を始めたもう一つの理由を原はこう言いました。

「もともと古着が好きになったきっかけがジーンズだからというのが大きいです。古着は過去に大量に作られたものを今現在販売しているものです。

なぜ昔の服が今の世の中で価値があるものとして存在しているのか?
それは、その時代に一定量流通し、誰かの手に渡って使われて、捨てられずに残っているからです。じゃあなぜ一定以上流通したのか?捨てられずに残ったのか?と考えた時に、その時代に必要であり、その商品が評価されたからだと思っています。

オールユアーズのプロダクトはトレンド感がないかもしれません。外観のデザインは限りなくニュートラルに、歴史に揉まれて完成されているデザインを踏襲しています。そのデザインコンセプトも、実は自分たちの手で20年~30年後にもう一度欲しいと思ってもらえるような商品を作りたいと思っている事自体がデザインコンセプトになっています

時代を超えても着られ続ける洋服には、理由があって存在しています。原は“今”だけに目線を向けて洋服作りをしているのではなく“必要とされ続けるモノづくり”を目指しています。

「一定量以上流通させたい。という意図があって同じ商品を作り続けるようなブランドを目指しています。そうすることによって未来に残る可能性が出てきます。
20年後に古着屋に並んで、やっぱりこれいいよなと思って欲しいし、僕が10代の頃に経験したことをオールユアーズのプロダクトで感じて欲しい。そのためには、その時代に評価されないといけない、その時代の人に役に立っていないといけない、一定量流通していないといけない。そんな考えを製品開発に反映させています」

ハイキックジーンズの着心地の秘密

ハイキックジーンズを制作する上で、一番最初に考えた部分は製品の土台となる生地の開発でした。「セルビッチ(耳付き)である」ことにこだわったと原は話しました。
「当時はただ単にヴィンテージのディティールを踏襲するためのこだわりだったのですが、開発していくうちにセルビッチでないといけない理由が見つかったんです。

シャトルで織ると、最新式の織機よりもスピードが遅くなります。ゆったりと織られることで生地自体がリラックスした状態で織られます。それがハイキックジーンズが持つ特有の柔らかさとストレッチのフィーリングにつながっていることが分かったのです」

ハイキックジーンズの生地はデニム素材の一大産地としてアパレル業界では有名な国であるトルコのISKO社で製造されています。ISKO社は世界的に見てもトップクラスの規模とブランド力を持つメーカーであり、世界中に拠点を持ち、ヨーロッパを中心に抜群の知名度を誇る海外の多くの有名メゾンも使用しています。

ハイキックジーンズのような製品コンセプトに忠実なジーンズを作ることができるのは「技術が伴っているISKO社しかない」と原は言いました。

「昔携わっていた仕事がきっかけで深い付き合いになったISKO社は、生産量も豊富ですが、世界的に見ても圧倒的な技術を持っています。彼らの特性は長年の付き合いでよく理解していたので、このプロダクトをつくるパートナーとして他社は考えられませんでした。

また『着る人目線』で開発に着手するアプローチ方法は、実は世界的に見てもオールユアーズからしか依頼が来ないようです。だから、ISKO社もそこに可能性を感じてくれているようで、対等なパートナーとして面白がって開発をしてくれています

そんな世界的な大手がオールユアーズのような小規模ブランドと手を組んでくれるのは、オールユアーズが持っている思想を海をまたいで共感してくれているからなんですね。
その次には、ストレッチ性を活かすためのデザインとパターン(型紙)でした。

「見た目のデザインやシルエットにも当然気を使います。
ただ、それよりも気を使うのは“生地の伸縮性を最大限引き出すためパターンや縫製仕様”です。
アパレルのデザイナーが勘違いしてしまいやすい事なのですが、必ずしも“生地の性能=プロダクトの性能”ではありません。
使い方によっては生地の性質を殺してしまう事になりかねません。
例えば“生地の伸縮する方向性”
と、着たときの“体の動き”を理解してパターンに落とし込む必要があります。

ハイキックジーンズは特に、生地の性能をそのままプロダクトまで落とし込むために試行錯誤しました。
伸縮性を保ちながらジーンズ本来の雰囲気を作るのがいまだに課題もあり、非常に難しいプロダクトなのですが、縫製に関しても、元々日本製のLEVI’Sの縫製を請け負っていた工場にお願いをしていたり、着心地以外のジーンズとしての“顔”もホンモノを目指して製造をしています」

実際に体験してみました。

実際に私がハイキックジーンズを履いてみて、“何も感じない”が率直に思ったことでした。

洋服を選ぶ基準は、デザイン、色合い、機能性、着やすさ、ブランドなど、その人にとっての基準値があるはずです。その基準値に“ストレスレス”という要素を付け足してみるとおそらく今の日常にいい変化が現れます。

求めている洋服のスペックにもう一つ、要素をプラスして、家で過ごす時間や、普段の日常の中を充実させることもファッションの楽しみ方だと思います。

ハイキックジーンズの存在

最後に原にこのような質問をしてみました。

「現代において、ハイキックジーンズはどういう意味がありますか?」

ジーンズだけに限らず、服はいろいろなものがある中で、新しい選択肢を作ることができていると思っています。僕の考える“服の価値”とは希少性ではなく、何回着られるが服の価値であり、そういう意味で今の時代に対して新しいジーンズの考え方を提示できているのではないでしょうか」と答えました。

毎日着たくなる状態をどう提案できるか?毎日着ても大丈夫なコンディションのものをどう作るか?オールユアーズの服の本質の一つはそんな原の強い考えが反映されたものだったのです。

“そばに置いておいて安心する洋服”

このような感覚に陥りさせてくれる洋服は中々現れません。これさえ持っておけば大丈夫、どんなシーンでも完璧に対応してくれるものです。もちろん一人一人の生活リズムやスタイルは違います。しかしその中で、私たち一人一人のライフスタイル、雰囲気に柔軟に対応してくれます。

これから過ごす時間の中で、“シンドイ”思いはして欲しくない。この強い気持ちから生み出されたこのデニムは間違いなく“いい変化”をもたらしてくれると思います。

最後に、「あなたはシンドイ洋服とシンドくない洋服、どちらを選びますか?

ナカムラリクのプロフィール

私が洋服に魅力を感じ始めたきっかけは、母親の存在でした。小学2年生の頃から野球をしており、そのころの自分は全く洋服に対して興味がなく、「着れればいい」という感覚でした。高校3年生で野球人生が終わり、家にいる時間が増え、ふと母のクローゼットを覗いた時に衝撃を受けました。溢れんばかりの色鮮やかな洋服がズラリと並び、半日クローゼットで洋服を眺めていた記憶が鮮明に残っています。そのタイミングで音楽が趣味である幼馴染みとよく遊ぶようになり、音楽とファッションに深く関わって、今の私があります。現在は大手セレクトショップでアルバイトをしており、たくさんの洋服に日々触れています。

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