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『LIFE SPEC TALK! パジャマ目線でlifeを語ってみようじゃないか?』トークイベント 必要なのは「余白」のあるデザイン。

『LIFE SPEC TALK! パジャマ目線でlifeを語ってみようじゃないか?』トークイベント 必要なのは「余白」のあるデザイン。

2018年8月10日 池尻大橋にあるALL YOURS実店舗にて行われた「LIFE SPEC TALK! vol.1 パジャマ目線でlifeを語ってみようじゃないか?」。

 

このトークイベントはHOTEL SHE,の龍崎翔子さん・マガザンキョウトの岩崎達也さん・ALL YOURSの木村昌史さんの3人がタッグを組んだクラウドファンディングのプロジェクト「夜遊パジャマ 」に関するものである。

 

「夜遊パジャマ」という字面を見たときに、まずはじめに覚えるのは違和感だ。

個人的にパジャマというものは、とてもプライベートなものという印象がある。眠るときに身に纏うものという限定的な用途のためか、普段人が着ているのを目にすることはほぼないし、個人的にも使い勝手の悪さから長い間パジャマを着たおぼえがない。

 

そもそも部屋着というのはぞんざいに扱われがちなものだ。人様に見せられないような格好といってもいい。そういう点では外に出られる部屋着があることで、家が持つ磁力のようなものが薄まるような気がする。

 

この企画を提案したのは、京都にある2つのホテル。

ホテルというものは居心地の良い空間を提供することが目的になっていることが多い。だから彼らが「外に出たくなるパジャマ」を提案するというミスマッチには好奇心をくすぐられた。

新たな試みを続けるマガザンキョウトとHOTEL SHE, そしてALL YOURS。

彼らの考える「ホテル」「京都」「ファッション」とはどのようなものなのだろうか。

 

今回の記事はそんな彼らの対談の記録である。

 

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「泊まる」ことで生まれる時間が余白を生み出す

 

 

 

木村:まずは岩崎さんにお話伺えればと思うのですが。

 

岩崎:はい。それでは簡単に自己紹介を。僕はマガザンキョウトをやっている岩崎と申します。マガザンキョウトとは「泊まれる雑誌」をコンセプトにした町家式の宿泊施設です。雑誌は季節ごとに特集を展開していますが、それを空間でトライしてみるというものですね。

たとえば以前本特集をやったのですが、そのときに「村上春樹の晩餐会 」というものをやりました。

村上春樹の小説って美味しそうな料理がたくさん出てくるんですよ。その料理を実際に食べながら、該当のページを朗読してもらう。読書から先の体験に置き換えてもらう企画です。

 

こういう切り口で、デザインやアートの特集を組んで、京都に縁がある人にやってもらっています。建前的には、リピーター獲得や新規顧客の開拓、「多様性のあるコミュニティ構築」を目的にしているのですが、本音は僕が好きな人に会うための仕掛けですね。特集ごとにアーティストや小説家などいろんな人と触れ合うことができるという下心があります。

 

木村:そういう取り組みはクリエイティブの会社みたいですよね。クリエイティブをやる中で「泊まれる」をキーワードにしたことで、何か変わりました?

 

岩崎:たとえば、デザインとアートの違いって、頭ではなんとなくわかっているつもりになっていてもアーティストやデザイナーと実際に話してみると全然違う。コミュニケーションも仕事のプロセスも、コミュニケーションや発注の仕方も全く違います。

ホテルって、滞在者と長い時間を一緒にいられるので、得られるものが大きいんですよ。言い換えると、そのブランドに丸一日滞在してくれるというすごく珍しいサービス。

 

広告の仕事をしているときに知ったのですが、ブランディングの成果をはかる重要な指標にはそのブランドへの「滞在時間」があるんです。これがホテルだと勝手にとんでもなく高くなる。

普通のホテルだと心地よい時間を提供するで終わってしまいがちなのですが、もっと付加価値を作れるんじゃないかと。

その付加価値をマガザンでは「京都カルチャーを体験できる宿」としました。

京都のユースカルチャーや伝統工芸などの文化を、長い滞在時間を通して知ってもらう。そして京都に詳しくなって、街にお金を落としてもらう。

チェックアウトする頃には、京都を好きになるための場所になって欲しいなあと思ってます。

 

なぜホテルって同じようなデザインなのか?

 

木村:続いて龍崎さんにお話伺えればと思います。

龍崎:私は京都と大阪でHOTEL SHE, をやっている龍崎と申します。

北海道の富良野でペンションを立ち上げたあと、京都・大阪のHOTEL SHE, を、その後、神奈川の湯河原で温泉旅館THE RYOKAN TOKYO、北海道の層雲峡にある温泉旅館を「ホテルクモイ」としてリニューアルさせました。

 

木村:そもそもなんでホテルをやろうと思ったんですか?

 

龍崎:ホテルを作りたいと思うようになったきっかけは、小さい頃に両親とともに行った1ヶ月間アメリカの横断ドライブです。アメリカは景色が変わらないので、車を降りて、泊まるところをみるのが唯一の楽しみだったんですけど、どのホテルとも似たような感じなんですよね。1日退屈に過ごしていたから楽しみにしていたのに、それすらも叶わないのかと幼心に思って。

 

そこが「なぜホテルって同じようなデザインになってしまうのか」というホテルに対する問題意識の原体験ですね。その後、ホテルの経営者という職業の存在を知って、自分がなりたいと思うようになったんです。

 

木村:色々なホテルを経営していると思うんですけど、意識していることはあるんですか?

 

龍崎:ホテルは、衣食住という日常生活に携わる全てのコンテンツを包括しているものです。スタンダードなものを提供するのもアリだと思うんですけど、「ライフスタイルを試着できるような空間づくり」を本当はできるはずだし、むしろそれは宿しかできないことなんじゃないかなと。

 

木村:僕は龍崎さんのことは湯河原のホテルの「原稿執筆パック 」で知りました。ホテルって部屋の質とかで語られがちだけど、これはそうじゃなくて、コンテンツを楽しむための場所なんだと感動しましたね。

 

龍崎:ありがとうございます。「原稿執筆パック」というのは昔の文豪が旅館にこもって原稿を書いていたという逸話を現在にリバイバルした企画です。

 

ホテルはお客さまの時間と空間を占有している。だからこそできる提案があると思うんですね。

たとえば大阪のHOTEL SHE, には全ての部屋にレコードプレイヤーを置いています。レコードプレイヤーって持っていたらかっこいいけど、音楽が相当好きじゃないと買うことは難しいじゃないですか。でもそういうものが当たり前に部屋の中にあると、自分の中で新しい扉が開いて、自分の人生が豊かになると思うんです。

 

木村:ただ泊まるだけじゃなくて、そこに行きたくなる理由がちゃんとある。

高級なホテルも楽しいけど、ハードル高いじゃないですか。その点、こういうものは等身大な感じだから利用しやすいですよね。

 

龍崎:原稿執筆パックも、温泉旅館の高級化に対するある種のアンチテーゼがあったんです。

バブル崩壊後、温泉旅館は勝ち残りのために、高単価を取って行くという戦略を取っていきました。そのことによって、温泉という当たり前にあったはずの大衆文化が、どんどんと手の届かないものになったような気がしたんです。その中で「いかに日常的な形で温泉に入ってもらえるようにするか」ということをデザインして作ったのが、原稿執筆パックでした。

 

木村:この企画がすごいのは、既存のビジネスモデルにカウンターを打ってるんだけど、相手を貶めようとしていないことなんですよね。これってすごく大事だと思う。

たしかに仮想敵を作って攻撃するのは目立つんですけど、みんなが疲れるじゃないですか。だから攻撃することなく、自然な形で別の選択肢を提案するのがみんなにとって心地いい。

 

龍崎さんのそういう感覚は業界における僕らのスタンスと似てるなと思いますね。

今、ファッションって高尚なものになってしまっているんですよ。めっちゃ服が好きだったり、コレクションしたい人向けのものばかりになってしまっている。

その対極に出てきた流れが、安価なものを大量に使って、着る服のサイクルを早くするというもの。基本的にはその二軸なんだけど、その間のものがあまりない。

だから、うちは「みんな」が着られて「道具」としての機能が高いものを作ろうと。今までのファッションの流れとは違うところで勝負しようと思ったんですよね。

 

龍崎:なるほど。今のオールユアーズの考え方ってそういうことなのか。

 

木村:たぶん龍崎さんと僕はポジショニングが似てるんですよね。

 

 

あらゆるサービスやコンテンツは基本的にユーザーを肯定するもの

木村:お二人と話していて面白いのは、宿をやっているようで、実はコンセプトやコンテンツを商売にしていること。

今って、ひとつひとつのクオリティだけで語れなくなって来た時代だと思うんですよね。ものだけじゃなくて、体験するものすべてをどう感じるか

たとえば、僕は喫茶店とかでお店で「〇〇様」って言われるより、「〇〇さん」と呼ばれる方が気持ちいいんですよ。サービスが雑なことが逆に気持ちいいことがある。全てが最高級だと身の丈にあわなくて、緊張することってあるじゃないですか。

 

そのあたりのバランス感覚が二人にはあるんじゃないかなと思っています。

雑なところがあっても、もっと気持ちよくするためにどうすればいいかというコンテンツで勝負するから、トレードオフしながら面白いもの作っている。

 

龍崎:サービスとかコンテンツ作りって、基本的にユーザーを肯定するみたいなところが本質だと思うんです。少し前まではユーザーにラグジュアリーな体験をさせることで肯定していた。それが最近ではその人の「ありのまま」をいかに肯定するかという形に変わってきたんですね。つまり、いかにその人の価値観にあった商品を提供するかが重要になってきたんです。ALL YOURSさんはすでにそのフェーズに入っているなあと。

 

木村:そうですね。今って日常の延長線上に洋服がある。僕の感覚ではファッションは週2から週7へなっています。もともと、ほとんどの洋服って土日に着るためで作られているんですね。

 

それが今では、多くの人がカジュアルな服を着て仕事をしている。休日も含めて、毎日洋服を着るようになったんです。その人たちにフィットする服があまりないんですよね。「ハレ」と「ケ」で言ったら、「ケ」の服。そういうものを自分たちはやりたいなと。

 

なぜ人はパジャマを着ないのか

 

岩崎:もともとマガザンの立ち上げのときに木村さんにパジャマを作りたいという相談はしていたんですよね。

 

木村:そう。お互い忙しくて、途中で止まっていたんですよね。それが再び動き出したのが今年の初頭に行われたマガザンキョウトのホテル特集「BOY MEETS SHE, 〜京都夜遊 – Magasinn Kyoto 」のとき。

 

岩崎:そうですね。龍崎さんと初めて会った日に、木村さんと考えていたパジャマの話を持ちかけました。

 

木村:はじめはパジャマっぽく、シルクやレイヨンの生地がいいという話だったんですけど、シワシワになりやすかったりとか。

 

龍崎:そうです。あと生地に柔軟性がなくて伸びないから、ちょっと寝づらいし、微妙かなとなったんですよね。

 

木村:今、パジャマって全然売れなくなってるんですけど、そういうことなんだろうなと。

 

そもそも寝具用途の洋服って世の中にはあまりなくて、みんな自分の想像力で流用している。スウェットパーカー着てても、それって別に外着のものを寝巻きに使っているだけ。

今の寝巻きって、使い古して、外には着ていくことができなくなったような服が行き着く場所になってるんですよ。

本来、寝るときのスイッチにもなるから、快適なら好んでパジャマを着る人って多いと思うんですよね。でも実際はスウェットやジャージを着ている人が多い。

 

だから作るときにまず着心地の良さを大事にしました。

肩周りがしっかりしていて、動くときにストレスがないし、生地もサラサラしていて、涼しめで早く乾く。

 

龍崎:この生地がすごく柔らかいんで、どんなポーズもできると思うんですよ。寝る前にストレッチやヨガ、朝起きてジョギングにも使えるのは個人的に推しですね。

 

ホテルにおけるパジャマは一晩限定の衣装

 

岩崎:今回のコンセプトって「夜遊びできるパジャマ」なんですけど、パジャマの由来を調べてときに「外に出られるパジャマ」っていいなあと思ったのがきっかけで。

 

もともとはパジャマの祖先って、「パージャーマ」と呼ばれるインドの民族服で足首までのゆったりしたズボンのことなんですよね。それをイギリス人がヨーロッパに持って帰って普及した。元々はヨーロッパで寝巻きとして利用されていたんですが、そのうちに外でも着れるようにと、襟付きのシルクのパジャマが生まれたらしいです。やっぱり中で着るだけの服だと昔の人も不便だったんですよね。

 

龍崎:私はパジャマ着ない派なんですけど、もともと外に出られるパジャマが欲しいなと思ってました。

というのも、私の日課って、夜のお風呂上がりにコンビニとかにふらっと行くことなんですよ。家ではTシャツにショートパンツという、かなりラフな格好をしているので、そのままだと外に出づらいし、かといって着替えるのもめんどくさい。だからどの季節でも使えて、かつ着たまま出かけられるパジャマがあったらいいなあと。

 

木村:夜に寝るときに着た服が、「かっこいいからちょっと外出たいな」ってなったら最高じゃないですか。しかもそれがホテルに置いてあったら一晩限定の衣装になる。すごく特別な体験になりうると思うんですよね。

 

岩崎:非日常感がある服ってことですよね。

 

木村:そうです。非日常感のある「衣装」であれば、夜に街を歩きやすくなると思う。大阪や京都の街をもっと知るきっかけになればいいと思ってます。

 

龍崎:3人で共通した思いは、街を歩いてもらいたいということ。

旅行でお金を使うポイントってほとんどが交通費と宿泊費。飲食費もあるんですけど、利益率で考えるとたかが知れている。ホテルが現地で一番お金の落ちている場所だと思うんです。

 

木村:ホテルって衣食住すべてを提供するから、結構閉じたメディアですよね。

 

龍崎:そうなんです。これまでの伝統的な温泉旅行って、食事・温泉・お土産・遊びのすべてが宿の中で完結してしまうんです。盛り上がっているときはそれでもいいけれど、地域にお金が落ちないから、トレンドが変わると一気に街全体の活気が無くなってしまう。こういう事例は過去にとても多いんですよ。

逆に今も盛り上がっている温泉地って、宿自体は小さくて、湯めぐりや外食などの街を歩かせる取り組みをすることで、地域自体のベースをあげている側面が強くある。

 

私たちの課題としては、「お客さまにいかに閉じないでいただけるか」ということ。

ホテルに帰ってきて、着替えて化粧を落としてしまったあとでも、街をちょっと歩いてもらえるようにしたいです。

 

岩崎:僕としてもそうですね。だから今回の企画はプロダクトデザインというよりもサービスデザインという感覚です。

パジャマだけを作るのではなく、近所の銭湯に行くための風呂桶やタオル、ノーメイクのときにかけるサングラスやニット帽を無料レンタルにしています。

これだけ外に出る理由を作ったら、人はどれくらい街を徘徊してくれるんだろう、という実験的な側面もありますね。

 

「波紋」のようなものを生み出していきたい

 

木村:ここからはみなさんのご質問を受ける形にしましょうか。ご質問ある方いらっしゃいますか?

 

ーーーこのパジャマってホテルでしか着ることができないのでしょうか?

 

木村:クラウドファンディングのご支援いただいた方には、リターンとして商品をお渡しさせていただいています。そもそもがHOTEL SHE, のコンセプトにある「夜の体験」をして欲しいという意図で作ったので、共感していただいた方はご自宅でもできるのがこの商品なんですよね。

 

岩崎:マガザンキョウトはパジャマとして使いたいなあと。

 

龍崎:私たちも何部屋かずつ導入していきたいですね。

 

岩崎:通常のパジャマの3倍くらいのコストだから、一気に導入するのは難しそうですね。

 

ーーー気に入った人はその場で買えるんでしょうか?

 

岩崎:その取り組みはしていきたいですね。未知数のものを購入いただいたクラウドファンディングの方は割引させていただいているので、今後定価で販売していきたいです。

 

木村:販売イベントとかもやってみたいですよね。夜21時スタートのパジャマパーティとか。

 

岩崎:ホテルだと夜遅くても大丈夫だから、そういうこともできるんですよね。ものを一つ作ることで広がりが出てくるのはすごくワクワクします。

僕はひとつのものにこだわりぬいてじっくりと作ることが苦手なので、波紋のように広がっていくものを作っていきたいですね。

 

木村:僕としてはクオリティの高いものを突き詰めたい感覚もあるんですけど、それ以上に余白があるものを作りたいんですよ。

それぞれが好きに用途を想像しながら使えるものがいいと思うんです。たとえば、この服は外出着にしても、部屋着にしてもいい。

 

明確にターゲットのペルソナを設定して突き詰めていくよりも、余白を作ることで、クリエイティブな遊び方をしている人たちに使ってもらった方がいいじゃないかなと思っています。

 

岩崎:デザインが完璧にされたものって、ユーザーとしても気持ち悪くなる人がいる時代なんじゃないかな。

 

木村:僕はシステム手帳を使うのがつらいんですよ。使い方がきちんと定義されすぎていて、圧力に感じてしまう。

 

龍崎:ベーシックでありながら、カスタムメイドできるのがいいんですよね。

 

—–今回、パジャマを作るにあたって、京都の街から影響を受けた部分はあるのでしょうか?

 

木村:僕にとって京都は泊まりに行くところなんですよね。多分パジャマを利用するのはそういう人の方が多いと思うので、その感覚を大事にしました。

 

京都は時間や場所によって色が違うから、いろんな場所を楽しんでほしい。だから中で快適に過ごせるというよりも、外に行けるということが重要だったんですよ。

 

僕は群馬県の富岡市出身なんですけど、富岡のホテルでパジャマを作ることになったら、室内でリラックスできるものを作ると思います。富岡には夜に遊びに行けるところがほとんどないので。

エリアの魅力をプロダクトでアウトプットしていくことを考えると、スポーティな方に振ってあげた方が京都っぽくなるなと。

 

 

ーーパジャマのデザインは今後、場所や季節によって新たなものを作ったりするのでしょうか。

 

木村:コンセプト的に「街を知って欲しい」というホテルなので、色とスタイル全部変えるというより、その場所のものを使いながら、皆さんでスタイリングしていく部屋着になっていくといいなと思っています。京都出身のスタイリストに選んでもらうとかは面白いですよね。

 

岩崎:確かに汎用性は目指したところではありますね。

 

これは裏話なんですけど、僕としては初めからビックシルエットがいいなあと思っていたんですよ。着たときにその方が楽なのもあるんですけど、彼氏のパジャマ借りてるみたいでいいなあと。

これは僕のフェチが垣間見れるような話なんですけど(笑)、街を歩くのなら着ている人を見たときの感覚もあるなあと思って。だからペアルックもやってほしいですよね。

 

木村:揃ってたら可愛いですもんね。

 

岩崎:服屋さんだと試着ってハードル高いですけど、ホテルは時間があるし、室内だと人の目もないから、着てみたくなりやすい気がする。

 

木村:そうなんですよね。ホテルだと浴衣とか着たくなるのってなんでだろう。ビジネスホテルのものとかすごく着づらいのに。

 

龍崎:浴衣は、はだけるのがすごくいやなんですよね。あとパジャマでも生地が硬かったりして。

 

木村:動いてもはだけないとか、お腹が出ないってことはやっぱり大事ですよね。

 

いろんなレイヤーが混ざり合うことで生まれる京都の魅力

ーーーみなさんの感じる京都の魅力とはどんなところなのでしょうか?

 

木村:僕が京都のいいところだと思うのが、二者択一が迫られないところ

例えば東京にいると、バンドマンはバンドをするか、やめて就職するかの決断をしないといけないんだけど、京都の人って平気で二足のわらじを履く印象がある。

知り合いにも、サラリーマンをやりながら個展を開いている人がいるんですけど、やりたいことと仕事をきちんと両立させている。やりたくないことをやるんじゃなくて、すごくバランスの良い働き方が多い。職業を聞いても、よくわからない人がたくさんいるので、懐が深いなあと。

 

龍崎:確かにそうですね。私の個人的な印象ですけど、京都は20代で暮らすには少し刺激が足りない街。だけどアラサーになって、UターンやIターンすると最高、みたいなイメージがありますね。

 

岩崎:たぶん少しお金がある方が楽しいんですよね。あと世の中を広く知っていればいるほど、適度な多様性を感じられる。プレイヤーが少ないからか、業界ってものがあまりないので、いろんな職種の人が仲良くしてるからだと思うんですけど。

 

木村:その混ざり方が京都固有のカルチャーを生み出してると思うんですよね。東京で人を集めると同じ職種で固まりがちけど、京都だといろんな種類の人が集まりますもんね。

 

岩崎:意外と新参者も受け入れてくれるんですよね。深みに行こうとすると、なかなかエグいんですけど(笑)。

 

龍崎:京都ってかなり保守的なイメージがある人が多いと思うんですけど、実は1000年の歴史の中で、常によそ者が入ってきているんですよね。だからベンチャーに優しい街なんじゃないかなと思っています。支援してくれることもないけど、いじめられるとかもない。そして、ちゃんと根を貼って行くと仲良くなれる。

 

岩崎:西陣織も遣唐使が持ちこんだものと言われてますもんね。いいものを取り込もうとする土壌がある。

 

龍崎:あとは京都に整然としたイメージを持つ方が多いと思うんですけど、どっちかというとカオス。新と旧、陰と陽、この世とあの世。本来二元的なはずのものが混在している空間だと思います。そこが街の面白さを引き立てている。だから観光地ばかりでなくて、地元の方が住んでるエリアも見てほしいですよね。

 

木村:全体感が掴みきれないですよね。奥が深い街だと思います。

 

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イベントが終わったあと、夏の夜のやけに生ぬるい空気の中で東京の街をぼんやりと歩いた。閑静な住宅街の中、遠くにある高層ビルの電灯や、信号機の明かりがやたらに存在を主張する。すれ違う人はほとんどいない。昼間とは違う街の輪郭がおぼろげに浮き上がってくるのを感じる。

 

どんなに楽しい夜遊びをしたときも、最後は必ずひとりになる。その瞬間に胸にあるのは言いようのない寂寥感。遊びのあとの残り香が、この日が終わらないでほしいと叫ぶ心を刺激する。

 

つらい、悲しい、寂しい。そういう様々な感情を夜の街は優しく包み込む。

夜がもたらす非日常は孤独と仲良くなる術を教えてくれるのだ。

だから外に出られるということは、夜に身に纏う衣装にとって大切なことなのかもしれない。

 

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https://camp-fire.jp/projects/view/84219

https://antenna.jp/articles/2734585

https://www1.489ban.net/s/c/plan/detail/customer/theryokan/plan/70087

《予告》ホテル特集「BOY MEETS SHE, 〜京都夜遊〜」 5/4〜7末 | 泊まれる雑誌マガザンキョウト